2010年6月14日月曜日

学芸会

小学校の四年。
学芸会で演劇をやることになった、走れメロス。
学級投票が行われ、どいうわけか主人公のメロスの役を演じる事になった。
嫌がる振りをしながらも、内心、飛び上がるほどうれしかった、誰よりも父や母に知らせたかった。
放課後の練習がしばらく続き、衣装も父の真っ白いワイシャツをおろして、母が手縫いでこしらえてくれた。
体育館の袖の舞台に立って、全校生を前に、大きな声で演じる、僕のメロスが居た。
カメラマンのフラッシュが焚かれ、どこからか拍手も聞こえた、あっという間の時間が過ぎて、僕は確かにヒーローだった。
明日からの生活の何もかもが変わる気がして、そして、数枚の小さな写真を残しただけで、何も変わらない事を
知った、メロスは友情だけを信じて走り抜いたのに。

テレビの上に置かれた写真立てには、真っ白い衣装の、僕のメロスが一生懸命に走り続けていた。

0 件のコメント:

コメントを投稿